コロナ禍で増えたtoC向けEC

コロナ禍でDXが加速し、強制的にデジタルの世界に様々な業種が向き合わなければいけなくなりました。

VUCA(*注釈1)と呼ばれる現代で、これまでBtoB向けのサービス展開をしていた企業が、コロナ禍によってtoC向けにも展開していく傾向が多くなった印象もあります。

総務省発表のネットショッピング利用世帯の割合を見ても、ユーザーがコロナ後から急激に増えたことも背景の1つでしょう。

参照:総務省 図表2-1-3-1 ネットショッピング利用世帯の割合

VUCAとは

*VUCAは「Volatility(ボラティリティ:変動性)」「Uncertainty(アンサートゥンティ:不確実性)」「Complexity(コムプレクシティ:複雑性)」「Ambiguity(アムビギュイティ:曖昧性)」の頭文字を並べたもの。もとは冷戦後より戦略が複雑化した状態を示す軍事用語であったが、2010年ごろより、「VUCAワールド」「VUCA時代」のようにビジネスでも用いられるようになった。
参照: HR pro “VUCAの意味とは?”

Shopifyの加入率の推移を見ても、個人・法人問わず、新規でECを開始している増加数が伺えます。

参照:PR TIMES 2020年のShopify 成長率を発表


今回は、VUCA時代の真っ只中で弊社でも問い合わせが多い、toB向けからtoC向けのサービスを始める企業が抱える課題について触れたいと思います。

toB向けにやっていた企業がtoCを行う理由とは

対法人に向けたサービス、卸をしていた企業がコロナでクライアントが打撃を受け、その結果、D2C新規事業として始めるケース

弊社では、上記のような内容のお問い合わせが多くなりました。コロナをきっかけで始める企業は多いのではないでしょうか。

さまざまな理由がある中で、弊社で多いのが下記の2点です。

  • 「to B向けに展開していたサービスをto C向けにテストマーケティングをしたい」
  • 「to B向けの事業がコロナで打撃を受けたのでD2C新事業をECで始めたい」

プロダクト・ライフサイクルという言葉がありますが、どのサービスにも衰退期がやってくると言われています。

「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」があり、「衰退期」になると売上げは低下し、利益も激減します。

新規投資がほとんど必要ないので一部の企業はキャッシュを作り続けられますが、その他の企業は衰退をたどるか、もしくは、新たな価値を模索するのか戦略をとる必要があります。

市場環境の変化が激しく、製品ライフサイクルも短くなり、同じ事業で成長し続けることが難しくなっています。

前置きが長くなりましたが、今まで安泰そうに見えていた商品・サービスがコロナで一変し、to B向けのみに展開していた商品を今まで戦ってこなかったD2Cに挑戦する企業が多い印象を受けます。

新たな事業を考え、起こし続けることにより、持続的な成長が期待できるということも考えられるでしょう。

ただ、B向けに培った商品・サービス力をC向けに展開することは単純なものではなく、ターゲットや趣味・嗜好、購入サイクルも全く異なりますし、プロモーション方法も違います。

上記の理由もありますが、デメリットばかりではなくC向けに展開することで、結果的にB向けのサービスに対して改善ができる可能性もあります。

例えば、今まで化粧品や、アパレルの卸を中心にしていた企業がC向けにD2Cブランドを立ち上げることで、そこで得た顧客からのフィードバック、マーケティング情報は結果的に、B向けの商品開発や改善に役立つと考えられます。

こういった理由から、C向けも展開することがあるのではないでしょうか。

陥りがちな「ひとまずEC」の考え

手軽に始められるECプラットフォームサービスは、導入のハードルがかなり低く
誰でもすぐに始められるメリットがある反面、ひとまず立ち上げたはいいけどどうすればいいのかがわからない、という状況に陥りがちです。

  • BaseやStoresのように月額数千円単位で始められるもの
  • Shopifyやmake shop、Future Shopのように中〜大規模の売上まで対応できるもの
  • SaaS型のシステムや、EC BEING・エビスマートといった大型のもの

上記のようなプラットフォームが存在しますが、ひとまず始めて構築費用やランニングコストがかさみ、血を流し続けながら何年で回収できるのか不明なままでいるのは、極めて危険なことです。

D2C=ECでひとまず立ち上げ 

上記のようなシンプルな考えで売れれば問題ないですが、 多くの企業が頭をかかえているのではないかと思います。

すでにある商品をD2Cとして売りたい場合などは、単なる販売方法の変更ではなく既存の流通で変えてしまうものは、ECではなかなか売れません。

企業が立ち上げる新規事業は事業計画書を始め、マーケティングリサーチ、ターゲティング、KGI/ KPI作成、予算立て年間スケジュール・3、5ヵ年計画など事前の準備も多く、項目が多いからこそ本来重要であるどのようにECで計画的に売上を取っていくかの「EC戦略」部分が、弊社がご相談頂く企業でほとんどのケースで抜けています。

なぜでしょうか。

EC戦略はECを継続運用したことがないとわからない

弊社では、創業当初から10年以上EC運用に関わり続けてますが、日々の運用の中で、マーケティングとPDCAを繰り返しているからこそ、見えてくるユーザーの動向や、更新の頻度、カスタマーからのフィードバックがあります。

このあたりは、ECプラットフォームや業種によっても運用体制、分析の仕方も異なりますので、「やったことがない」と戦略を立案するのは難しいと考えています。

現代で、これだけ数多くのD2Cブランドが乱立かつ新規が立ち上がる状況で、短期間のECサイトを立ち上げプロモーションをかけて売れたとしても、このEC戦略がなく中長期で苦労するクライアントを多く見てきました。

こういったことから特に陥りやすいのではないかと感じます。

D2C ECに必要な考え方

では、具体的にどのような考えをもっていけばいいでしょうか。

現代では顧客体験(CX)までデザインすることはマスト

CXとよく言いますが、既存で似たようなものを販売したところで、待っているのはレッドオーシャンであることはいうまでもなく、オンラインだけでブランドの熱狂的なファンを増やしていくのはかなり難しいと思います。

リアルな空間でブランドの世界観を体験させる・商品を直接手に取る・販売スタッフと対面でコミュニケーションを取る・こういったことで愛着が湧いたり、広告からECを見る可能性よりも、接する方が顧客体験が生まれやすくなります。

このようなことからも、実店舗はあるに越したことはありません。

なので、オンラインのみで解決することは理想ではありますが、現実的に自分がユーザーとなったときにどう感じるのか、ターゲットとした世代に対しても実際にアンケートを取ったり、マーケティングリサーチすることは間違いなく必要です。

実際に考えてみたよりも合っている、違っている部分を洗い出しながら調整するのがいいでしょう。

プラットフォーム選定→戦略ではなく、戦略ありきのシステム選定

次にでてくるのが、プラットフォーム選定の課題です。

「 ◯◯が流行ってるし、成功事例もあるからそのプラットフォームでひとまず考えてみよう」

上記は、とてもよくある事例で、間違いではないのですが、それが果たして自社のブランドにあってるのかどうかは別問題です。

例えば、定期購入がメインの商品を扱っているのに複数通販を得意としているプラットフォームを選ぶと、機能的に細かな設定ができるのかは事前に確認を取る必要があります。それが、いざ開発となると、後々の改修費用もかさむことになります。

プラットフォームありきで考えると、できる機能もプラットフォームに合わせた状態で戦略を練ることになるので「あの機能も追加したらどうか」「じゃあこの機能も入れてみては?」のように、本来、不要そうなものまで追加する可能性も高くなってしまいます。

安価なプラットフォーム、大規模プラットフォームが良いことではなく、戦略にあったプラットフォームが必ずありますので、そこはフラットに見るべきでしょう。

また、制作会社によって得意としているプラットフォームが異なり、可能であれば横並びでメリット・デメリットを説明してくれるような企業のほうが安心できると思います。

戦略立案の方法

フレームワークを使いながら自社の強みや弱みを整理する

3C分析やSWOT分析などを使いながら、自社の強みが何なのか、ゴールはどこなのかを整理します。

ここで重要なのが、これは一部の人が行うのではなく、事業に関わる人が、全員共通意識でいる必要があります。ここで意見を交換し、詰めていくことで実際にスタートした後も1つの軸ができ、判断基準がブレることが少なくなります。

to C向けECを始める際の考え方のまとめ

戦略を整理し、プロジェクトに一貫性を持たせることで中長期で戦える軸をつくることが重要

新規D2Cの中で成功する可能性は、1割未満と言われ、継続的に売上を上げていくことは覚悟と金銭的な体力が必要となります。

その中で全ての条件がそろうケースも少ないのも事実ですが、スモールスタートをするにしても、今回取り上げたような項目について一度整理した上で取り組む必要があります。

今回のコロナのように、ある日突然、世界的に起こる危機に誰もが備えることはできませんが、今のタイミングだからこそ、こういったD2Cについて深く考え実行し、修正しながら挑戦を続ける絶好の機会でもあると感じています。


ART PEACEでは、戦略立案から制作〜運用までやっていますので、お気軽に弊社問い合わせページから、お問い合わせください。

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